エバーグリーン詐欺事件(10 年投資のスキームでだまし取られた数百億円)からオフショア及び海外投資家が学ぶ事

Posted on Apr 27, 2002

元本と年間9 パーセントから12 パーセントの収益。それは一見リスクの無い非常に魅力的な投資商品と思えた。

フロリダ州、タンパベイ2,000 人の主に年配の投資家がそのエバーグリーン・セキュリティーズの商品があまりにも魅力的に思えて約 $200百万ドルつまり約260億円もの投資してしまった。時を同じくして、日本でもオフショアを薦める本や業者につられて投資をしてしまった人々がいた。

しかし、米国当局は、最近、このエバーグリーン・セキュリティーズ事件が、いわゆる「ポンジー・スキーム」 の一つであった事を明らかにした。同時にこれはフロリダの歴史上、最も大きな詐欺事件の一つであることも認めた。この「ポンジー・スキーム」とは、顧客資産の保護が一切されておらず、顧客の金をまるで自分達の金のように自由に使い込み、客から投資資金の引き上げを請求されると、新しい客を見つけて投資させその資金を古い投資家への支払いに充当するスキームの事である。必ず資金が回らなくなり破綻する。投資の世界では、非常に単純でかつ最も多い詐欺スキームのことである。

「オフショア投資商品」であったこのファンドは実際はオーランドをそのベースにしていたが日本を含めた世界的に販売された。

投資家は業者からの薦めにより、非常に手堅く魅力的な投資と信じてそれに投資を行なった。しかし、実際に被害が明るみになるまで何が行なわれていたかを全く理解していなかった。

しかし、業界で経験をつんだ専門家からすると、その商品の危うさは一目瞭然、非常に明確だった。不幸な事に、こういった「ポンジー・スキーム」に騙され投資をしてしまった投資家は、専門家の意見に実際に耳を傾け不安を感じながらも、それを認める事はなかなかの勇気が要るようである。

米国で2001年1月にこの会社が約260億円もの債権を抱えて倒産し、やっと詐欺事件として米国内当局がその全貌の解明に乗り出した。州と連邦政府は、この詐欺スキームの全貌を明らかにするため、特別チームを約一年間コスタリカに送り調査を行なった。

その全貌が裁判所の関連書類に綴られている。

エバーグリーンはトマス・スペンサー (オーランド 51才)とオーランドの弁護士のロバート・ボイド(55才) によって1991 年に設立された。1998 年にこのスキームはオーランド弁護士のマーティン・ボーレンズjr( 55才)によって継がれた。彼らはこの詐欺的な商品の販売当時は合法に行なわれていた、と主張している。

保険代理店及びエージェントは、何の疑いも持たない彼らの顧客にこのエバーグリーンの販売を行なった。投資家には、お金は連邦政府関係機関によって保証されている債券に全て投資される、と説明した。

しかし、それは偽りだった。

投資家のお金の60 パーセントがエバーグリーンによって販売手数料、手数料、交通費及び他の費用の支払いに使われていた。同時に僅かな金額をリスクの高いヘッジファンドに投資もしていた。

何年もの間、 分配金を毎月受け取っていたため、投資家は全く不思議に思わなかった。しかし、古い投資家に支払う資金を、新しい投資家のお金で補うという、全ての「ポンジー・スキーム」がそうであるように、結局新しい資金を十分に集める事が出来ずにエバー・グリーンは破綻した。しかし、満期時に投資家に資金を返す前に、意図的に破綻した可能性も高い。もちろん倒産する前に資金の一部を自分の懐に入れて。

この投資が多くの名前を用いて販売されたため、当局はまだ被害者すべてを識別できていない。例えば, エバーグリーンはタンパでは「ワールド・ボンド・パートナーズ」と言う名前で販売され $35 百万がタンパで消えてしまった。 その投資家の大部分は年配者であった。日本でも色々な名前で販売されたようである。

投資家はもし、リスクが全く無いにも関わらず、高い収益を上げる投資商品を薦められた場合、99 パーセントそれは危険な投資である事を十分認識し、警戒するべきなのである。

エバーグリーンの破産受託者によって僅かなお金が戻った。しかし、投資した多くの金額を取り戻えるかはかなり疑わしい。

スペンサーとボイドは5 つの罪状に対して無罪を主張している。それらは一般的な詐欺罪、証券取引詐欺罪で2件、及び郵便と電信送金でのそれぞれの詐欺罪である。またボーレンズも3つの罪状に対して無罪を主張している。

タンパのアンソニー・ビンセント・ミッキシェ、(72才) は, 大量のエバーグリーンを販売したブローカーであったが、米国内で販売登録を行なっていない有価証券を販売した罪で起訴され、同様に無罪を主張している。

この4人全てはすべて実刑が求刑されている。

ニューヨークのマンハッタン地区ではボーレンズがニューヨークのエバーグリーンから資金を盗んだ疑いで他の二人同様に起訴をされている。ボーレンズは詐欺とと窃盗罪に対して無罪を主張し5 月1 日証言する事になっている。

この事件から学べる事は幾つもある。

まず元本と高い収益が同時に保証されている商品など、まず世の中には無いと知るべきである。なぜか?もし、そんなおいしい話があれば普通は自分でその投資をするはずだからである。通常は人に販売せずに銀行などから借入れをするなどあらゆる手段を用いて資金を調達し自ら運用するはずである。従って、もしあったとしても数億単位で投資するのでなければまず、自分の手には回ってこない、と考えておいた方が無難であろう。

当局の事なかれ主義の対応にも問題がある。通常は、間違いなくこの手の投資商品に関しての問い合わせや通報が入っているはず。にも関わらず、実際に被害が表面化するまで重い腰を上げない。これは問題だ。市場が詐欺案件に食われてしまう上に、事件が表面化してしまうと市場そのものが小さくなってしまう恐れがあるからだ。被害者の多くが、「有名新聞や雑誌等で大々的に広告宣伝しており、本当に問題があるならば、当局がとっくのとうにに取り締まっているはず」と考えている点にも配慮を願いたいものである。

具体的に名前は控えるが、ご多分に漏れず日本でもオフショア・ファンド、プライベート・バンク絡みで「ポンジー・スキーム」で資金を集めている業者は幾つも存在している。

ある程度自分に自信がある投資家は、自分の力だけで海外投資を行なえると思いがちである。しかし、残念ながら最近は専門家も舌を巻くほど巧妙に仕組まれているケースも多い。財布に余裕があるのであれば、地雷を踏んで怪我をする前に、信頼できるコンサルタントや第三者に相談する事を強く勧める。

エバーグリーンのケースでも本当の専門家であればそれを見破る事は決して難しくなかったはずであるから。



<<ニュースの見出しに戻る

Top Page

Copyright© 2001, J. K. Wilton & Company.
For further information contact webmaster@jkwilton.com