サブプライム破綻②

Posted on Nov 21, 2007

─────────────────────────────────
≡ COLUMN 「サブ・プライム問題②」
─────────────────────────────────

 前回は「サブプライム(ローン)破綻」についての概要とそれを良く理
解するためのキーワードを幾つか列記しました。今回はそれらについて解
説を試みたいと思います。

 2001年1月21日にブッシュが政権の座に就くまでアメリカはクリントン政
権下で、インターネット等の普及による景気拡大を謳歌していました。こ
の期間に株価は大きく上昇し、ダウ工業株価指数は1万ポイントを突破しま
した。これは後に「ITバブル」と呼ばれるものでもありました。

 しかし、政権についてからブッシュ大統領はこの「ITバブル」の反動を
もろに受け、株価はしばらく調整を続けていました。

 そして「ITバブル」に代わる新しいバブルが出現したのです。それが不
動産バブル」なのです。しかし、今回米国で起こった「不動産バブル」は
今までのバブルとは趣が異なっていました。

 そして5年以上にもわたる長いバブルが継続するためには幾つかの仕掛け
の存在が重要でした。

 例えばその1つには不動産投資のブームが起きる事が上げられます。

 偶然にもこの時期には日本でも有名な「金持ち父さん、貧乏父さん」が
出版され、著者である「ロバート・キヨサキ氏」は一躍有名になりまし
た。彼はその著書で不動産投資の重要さと素晴らしさを主張しています。

 今までの不動産投資と異なる点は、彼が値上がり益よりも家賃から発生
する「キャッシュ・フロー」を重視していた点でしょう。しかし結果は同
じで米国内の主要都市の不動産はこの間大幅に値上がりをしています。

 このロバート・キヨサキ氏の教えの通り、信用力のある個人は現在保有
している不動産を担保にして、さらに不動産投資を拡大しアパート等の不
動産経営に乗り出しました。これはITバブルの時代に、保有している株式
を担保に借金をして更に投資を行なったり、消費をした個人が多かった点
と酷似しています。

 しかし、信用力のある個人への融資にも限界があり、いつまでも融資が
拡大する事はありません。融資を拡大するには更に対象者を増やす必要が
ありました。

 そこで目をつけられたのが、所謂サブプライム・ローンの利用対象者と
なる信用力の低いマイノリティなのです。このマイノリティには「アミー
ゴ」と呼ばれるヒスパニック系の住民が多く含まれています。 

 これら信用力の低い個人に融資を行なう事は当然リスクが伴います。通
常は高い金利が設定されるため、融資は爆発的に増える事はありません。

 ここで金融技術の発展と高度化が重要な役割を果たします。

 まず、融資を拡大するためには、借り入れ時の金利を低くしなければな
りません。そこでローンの提供者は当初の数年間だけは金利を低くを設定
し、不動産購入資金を借り易くしました。これにより英語の契約書を理解
できない多くの移民がその内容を知る由も無く融資を受け不動産を購入し
ました。

 このような、変則的な仕組みのローンは「エキゾチック・ローン」と呼
ばれ更に融資を拡大する事に貢献しました。

 この「エキゾチック・ローン」によって取り合えず信用の低い個人に資
金を提供する事に成功したローン提供者は、いつまでもこのリスクの高い
ローンを保有する事は、得策ではないため、これを自分のバランス・シー
トからうまくはずすことを考えます。
 
 ここで証券化技術が利用された訳です。ローンを証券化することで、こ
のローン提供者はこのリスクの高いローンを切り離すことに成功しました。

 しかし、このリスクの高いローンを証券化しただけでそのまま買う人が
果たしているのでしょうか?当然、このままではこのローンに投資を行な
う投資家はまずいません。ここで大きな役割を果たすのが、格付会社で
す。

 アメリカのムーディーズやS&P等の大手格付け会社はなぜかこれらの証
券にこぞって高い格付けを付与します。これによりヘッジ・ファンドを含
むピカピカの金融機関もこぞって投資をする事になります。

 これで一連のサブプライム・ローンのスキームは完成です。米国内の投
資家はもとより多くの欧州の投資家がこのスキームに引っかかってしまう
事となってしまうわけです。

 ◆(次回に続く)

─────────────────────────────────
.≡ INVESTMENT NEWS 「インフレ=ドル下落に備える投資②」
─────────────────────────────────

 現在アメリカは「サブ・プライム問題」の影響が決して軽重ではないこ
とを、認識しつつあります。

 事の本質はこの問題が実体経済に影響する事ではなく、今まで実体経済
を支えてきたスキームが破綻した事なのです。加えて、融資の焦げ付きが
更に増加すれば不動産価格が下落をして担保価値が下がりさらに焦げ付き
が増加するという悪循環も懸念されます。

 つまりこのスキームに変わる新しいスキーム(バブル)が構築されなけ
ればアメリカは基本的にかなり長い景気後退に入ると予測されます。

 ちなみに新しいスキームとは云えませんが一つ緩和策があります。

 それはインフレを発生させる事により不動産等の価格を維持する事によ
って、米国内での景気を維持するのです。しかし、このインフレにより米
ドルは安くなります。つまり、米国外の国から見ると米国内の資産は基本
的に安くなっていくことになります。

 そこで米国外の資産と商品等の実物が注目される事になるわけです。

 ここで留意いただきたいことは、ドル建ての商品を保有する事が必ずし
もドル安の影響をもろに受ける、ということではない点です。例えドル建
てであっても投資する先がドル建てで無ければ、その商品の価値はドルの
価値が値下がりをした分だけドルでの数字が増加するのでヘッジが聞く事
になります。

 また貴金属、原油、農産物その他商品等の実物は原則的にドルの価値変
動には影響されません。ただ昨今の商品先物の上昇関しては新興国の需要
拡大と、供給逼迫に加えて、ドル安もその上昇に起因していると考えるべ
きでしょう。

 次回は具体的にどのような投資が候補になるか考えてみたいと思います。

◆(次回に続く)



<<ニュースの見出しに戻る

Top Page

Copyright© 2001, J. K. Wilton & Company.
For further information contact webmaster@jkwilton.com