サブプライム破綻③

Posted on Feb 6, 2008

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≡ COLUMN 「サブ・プライム問題③」
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 米国経済の今後の見通しが、かなり怪しくなってきています。

 繰り返しになりますがサブ・プライム問題が実体経済に影響をしている
のではなく、ようやく実体経済が現状を反映し始めた、といえます。

 アメリカの株価は連邦公開市場委員会の、度重なる利下げを受け何とか
1万2000台のポイントを維持している状況が続いています。

 既にサブ・プライム・ローンの破綻→大手銀行の巨額損失計上→大手保
証会社であるモノラインの財務内容の悪化、と今まで起こった3つの危機
は何とか乗り切ることができました。

 ようやくこれで空く抜けそして悪材料打ち止めとなり、再度米国経済は
景気拡大局面を迎えられるのでしょうか?

 そうは甘くはありません。今後もこれに似たような金融危機が何回か起
こることが想定されます。米国の不動産市況は容易には上昇をしないであ
ろうし、破綻するサブ・プライムローンはこれからも続々と出てくること
でしょう。

 同時に、世界の金融当局はその度に何らかの手段を講じ、短期間での大
きな混乱を避けることができるでしょう。なぜなら、人類は過去何回かの
金融危機から学習をしているからです。しかし、それでも今回の混乱の原
因を完全に取り除くことは不可能です。今後も混乱はゆるやかにかつスロ
時間を掛けて継続して起こるでしょう。

 先日ブッシュ大統領は任期最後の一般教書演説で「現在アメリカが直面
している最も大きな問題は、もはやテロとの戦いではなく、経済問題であ
る」と宣言しました。

しかし、この問題は既に次の大統領の問題であり、もやはブッシュ大統
領にとっては他人事に等しいのではないでしょう。

 いずれにせよ、アメリカの借金による大量消費に依存しすぎていた日本
を含めた世界の経済構造自体がおかしいといわざるを得ません。今後欧米
特に米国では更に金利を下げジャブジャブと市場に資金を供給することに
なるでしょう。そしてその結果はモラルの欠如とインフレということにな
ります。

 そしてアメリカ経済後退の局面にあるとすれば、もしかすると危機的な
状況におかれているのは実は日本なのかもしれません。

 例えばこれだけドルがユーロに対して値下がりをしているに関わらず、
円に対してはそれほど値下がりをしていません。これは実質ドルとユーロ
という2つの通貨に対しての円の値下がりを意味しており、食料などの多
くの原料を輸入している日本にとって、円の値下がりによる原料値上がり
のダメージは決して小さくないはずです。つまり円の一人負けの状態なの
です。

 現在、世界の先進国通貨で最も割安な通貨は円である、と見なされてい
ます。しかし、これはあくまでも「現時点」での評価で、将来的な見通し
を加味するともしかするとすでに適正に評価された価格になっているのか
もしれません。

◆(次回に続く)

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≡ INVESTMENT NEWS 「インフレ=ドル下落に備える投資③」
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 前回、

  1)資源、貴金属、商品などの実物投資
   2)新興国、資源国等の米国以外の地域への投資

 等への投資が中長期的には有望視されるとしましたが、今後1年間は各
市場において変動率が上昇することを考慮すると、短期的にはこれらの市
場もかなり荒れることが考えられます。

 すべての投資家がハイ・リスク/ハイ・リターンを望んでいるわけでは
ないのは当然のことです。

 とすれば今注目すべきは正に「ヘッジ・ファンド」ということになりま
す。しかし、ヘッジ・ファンドであればどれでも良い、ということではあ
りません。例えば債券特にCDO、MBS、CDSなどの証券化商品に投
資を行っているファンドは避けたほうが無難でしょう。

 単1戦略(シングル・ストラテジー)で特に注目されるのが「破綻証券」
投資戦略です。

 これはいったん破綻をした有価証券に積極的に投資を行うファンドで日
本がバブルの後処理で苦労していた際に、大量にこれらの株や債券を買い
あさったファンドの戦略がこれです。

 更に特に注目されるのがマルチ・ストラテジー(複数戦略の組合せ)等
の複数のファンドによって運用されるファンド・オブ・ファンズです。特
に運用実績が10年以上もある老舗のファンドが注目されています。

 世界の為替や先物市場で運用を行うファンドもそれなりと収益が期待で
きます。

 世界の株式市場がホットであった局面では、急上昇する「新興国株式」
の運用成績に目を奪われがちだった投資家の目も、当面はこれらのヘッジ
・ファンドに向いていくこととなるでしょう。

 更にロング・オンリーの新興国株式ファンドに加えて、空売り等を絡ま
せてヘッジを効かせている新興国対象のヘッジ・ファンドも面白いかもし
れません。

 何をもって良しとするかは個々の投資家の目的や目標によって異なりま
すが、少なくとも今後の相場の荒れを予想するのであれば、ストレスを減
らす効果は十分期待できるでしょう。

◆(次回に続く)



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