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サーティファイド・ファイナンシャル・プランナ−(CFP) 落 義門

2001年2月10日

オフショア金融センタ−を活用した個人資産運用・防衛法 III

前回2回目は、オフショアとは何か、オフショアの由来について説明しました。今回は、 オンショアリスクについてお話し致します。

<オンショアリスク(Onshore Risk:自国内に存在するリスク)>

資産運用には 予め考慮しなくてはならない様々なリスクがあります。例えば、流動性リスク、信用リスク、価格変動リスク、為替リスク、カントリ−リスク、インフレリスク等です。

オンショアリスクとは 自国内において資産運用を行う際に存在するリスクを指します。バブル崩壊後、それまで経験したことが無い様々な問題が日本国内に表面化してきました。可能性をある程度想定していたか もしくは予想もしなかったリスクが現実化して、結果として損失を被ることは多々あります。最も後悔するのは、リスクをある程度想定していながら もしくはそのようなリスクが起こり得る情報を何らかの方法で得ていながら、何も対抗策を講ぜず損失を出したケ−スでしょう。投資家が資産を守り増やしていく為には、今日の我国の経済環境、金融環境等が投資家に及ぼす影響、そして存在する様々なオンショアリスクを認識する必要があります。

<金融機関の信用リスク>

行政主導によって保護されてきた護送船団方式の時代に別れを告げ、自由な競争原理を市場に持ち込み、その結果 不健全な金融機関は金融市場からレッドマ−クを突きつけられる時代になりました。2002年4月からは銀行がつぶれても預金は全額保護される時代は終わります。ペイオフ時代の始まりです。

1億円の銀行預金を持っている人は、1行当たりの元本保証1千万円を10行に分けて銀行の信用リスク分散を計る事になります。このことは預金者にとって、新たに預金の管理負担が生じ、さらに分散による資金効率の悪化を招きます。資金効率を考えるのであれば、例えば信用の置ける銀行に1億円を預金して利息の上乗せ交渉を考える必要があります。つまり、金融資産保有額によって金融機関の安定度、健全度、信頼度を客観的に判断して銀行取引をすることが、預金者に求められることになります。

バブル時代のツケは大きく 日本の銀行が安定性と信頼性を取り戻すにはまだまだ道は遠い状況です。世界には日本の銀行より優れた財務内容を持ち、競争力がある多種多様な金融商品を取り揃え、グロ−バルなネットワ−クを展開している外国銀行がいくつもあります。 国内金融機関の信用リスク分散対策として 新たに外国の金融機関との取引を考えざるを得ないほど日本の銀行はまだまだ総合的に脆弱しています。

<超低金利リスク>

金融庁発表による全国の金融機関の回収に注意が必要な債権や不良債権を合わせた「問題債権」の総額は平成12年3月末現在81兆円あり 前年同期に比べ1兆1000億円増えています。主たる要因はバブル時代に行った過剰な不動産融資の不動産時価が、下げ止まっていないからです。 銀行の運用金利とほとんど金利ゼロの調達コストの差による運用利益をもって バブル崩壊後の金融機関の抱える大量の不良債権をいち早く処理するために、日本の金利は低い水準に誘導されています。しかしながら、一向に盛り上がらない消費そして株や不動産の価格下落など、長引く経済の低迷のなかにあって そごうデパ−トの破綻、ハザマ、熊谷組などの建設会社向けの銀行の債権放棄などの新たな問題が浮上してきました。意図的な超低金利政策によって恩恵を受けていたはずの銀行の借り手にも体力の限界が見えてきました。

一方、生命保険会社は運用環境が厳しい為に6社も破綻しました。金利を上げれば多額の銀行借り入れをしている企業に問題が生じ、超低金利政策を続けていると 更なる生命保険会社の破綻や年金基金が契約不履行を起こしかねない問題などが生じる可能性が高まっています。つまり、現在の金融政策は手詰まりの状態と言えます。日本の銀行が更なる不良債権を抱えることを避ける為には、金利の引き上げは当分の間行われないとの見方をせざるを得ません。不良債権を一掃するにはまだまだ時間もかかり、預金者は引続きほとんど金利ゼロの環境に我慢を強いられます。このことは、今まで取り続けて来た預貯金を中心とした貯蓄行動では資産の増加は期待できないということになります。

<インフレリスク>

日本は原材料の大半を輸入に依存しています。現在の日本の安定した物価は、輸入物資の低価格と円高で支えられています。バブル崩壊後のデフレ経済に慣れきってインフレの懸念を抱く人はあまり居ないようです。日本のアキレス腱は石油と食料です。穀物自給率は27%、エネルギ−自給率にいたっては僅か5%でしかありません。仮に石油や食料の価格が高騰し、急に円安になるとしたら、輸入インフレを招いてしまいます。不良債権の処理が終わらないうちに、円安を食い止めるために 当局は円金利を上げることが果たして出来るでしょうか?

石油は1999年2月バーレルあたり10ドルでした。2000年9月はバーレル37ドルをつけました。ヨーロッパ大陸では石油販売業者による大規模なストライキが起こり、イギリスではわずか1年半でガソリン価格が3倍になったことは記憶に新しいと思います。幸い、日本では石油元売業者の過当競争と円高のおかげで庶民の生活にはあまり影響は有りませんでした。

いつかはインフレが起きます。日本人の個人金融資産は現金・預金が50%以上を占め、偏在しています。預貯金は特にインフレに弱い金融商品です。現在、日銀は市場に大量のお金を供給し超金利政策を維持しています。金利が上がらない 或いは上げられない状態でインフレになれば、ほとんど金利ゼロの預貯金はインフレリスクヘッジ機能が失われ実質マイナスになります。インフレになれば通貨の下落を招きます。円安が進めば輸入物価は上昇します。仮に1ドル=110円から160円になれば円の購買力は45%減少したことになります。従って、ドルなどの外貨に替えて資産の一部を保有していないと運用資産の経済的購買力は守れなくなり、円資産が目減りすることになります。インフレによる資産価値の下落を防ぐためには、預貯金以外の金融資産の運用を本格的に目指すことが大切になります。◆

次回はオンショアリスクの続きとオフショアマネ−ジメントについての話です。

オフショア金融センタ−を活用した個人資産運用・防衛法 (2)

オフショア金融センタ−を活用した個人資産運用・防衛法 (4)

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