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サーティファイド・ファイナンシャル・プランナ−(CFP) 落 義門

2000年12月10日

オフショア金融センターを活用した個人資産運用・防衛法 II

前回は、世界の常識が通用しない日本国内の不利な外貨預金について説明しました。今回は、オフショアとは何か、オフショアの由来についてお話し致します。

<オフショア (Offshore) とは?>

オフショア(Offshore)とは海岸線、波打際、岸、(Shore)を離れた(Off) 向こう側を意味し、海岸線の外側、岸を離れた沖、すなわち、沖合いとなります。

世界に存在する多くの国際金融市場のなかにはオフショアの言葉をそのまま使用している場所があります。中近東のペルシャ湾内に存在する淡路島ほどの小さな島国バーレーン(Bahrain)はオペックのメンバーであり、なおかつ中近東地域の国際金融市場でもありますが、この国にはOBU(Offshore Banking Unit)と呼ばれる銀行業務を遂行するオフショア金融センター(Offshore Financial Center)があります。オフショア金融センターでの銀行業務を一般にオフショア・バンキング(Offshore Banking)と呼びますが、OBUでは中近東諸国の通貨ばかりでなく世界の主要な通貨を取り扱っています。OBUに現地法人を設立登録した金融機関は、バーレーン国外(Offshore)の非居住者から調達した預金をバーレーン国外の非居住者に貸出して運用します。

バーレーン国内から資金を調達してオフショアで運用したり(In-Out) 逆に、オフショアで調達した資金をバーレーン国内での運用(Out-In)はOBUでは禁じられています。あくまでも外-外(Out-Out) の資金取引のみが許されています。金融機関がOBUライセンスを取得する際の設立登録は容易にでき、法人設立費用や年間登録費用も安く、年度税も低税率と優遇されています。一方、OBUには法人及び個人のバーレーン非居住者に対してOBUの金融機関を通じて得た預金利子は非課税となる税の優遇措置があります。

呼び名こそ違いますが、アジア地域の国際金融市場の一角を担うシンガポール(Singapore) にも同じように外ー外の資金取り扱い銀行業務を行うオフショア金融センターがあります。ACU(Asian Currency Unit) と呼ばれ アジア通貨に加え、国際主要通貨を取り扱っています。ここでも、OBU と同様にシンガポール非居住者がACU を利用した場合、その預金利子は非課税となります。前回取り上げました日本の国内銀行とシンガポールの銀行とのUSドル預金利率の比較はACU利率によります。

従って、オフショアとは現地法人の設立や運営が容易で低コストで行える場所の提供があり、その場所の取引形態はあくまでも外-外の金融取引に限られ、顧客対象は非居住者のみ、そして利用者である非居住者は税制上の恩恵を受けると言うことになります。余り知られてはいませんが、日本にもオフショア金融センターはあります。JOM(Japan Offshore Market)と呼ばれ 法人のみが利用でき、個人の市場への参加は認められていません。

現在、OBUやACUのように非居住者の金融資産運用に対する税制上の優遇措置を提供しているオフショア金融センターは全世界に60以上存在します。

<オフショアの由来>

オフショアと言う言葉は法的に認められた用語ではなく、英語でInsular Vantage Point の意味合いを含みます.Insular は日本語で島を意味し、Vantage Point は有利な地点、地の利を意味します。つまり、島の利点を指します。イギリス人にオフショアとたずねると、ジャージー(Jersey)、ガーンジー(Guernsey), アイルオブマン(Isle of Man)のいずれかの言葉が返ってきます。ジャージーとガーンジーは英国と仏国間のイギリス海峡(The English Channel)に浮かぶ小さな島で、英国領チャネル諸島(The British Channel Islands)を形成する1番目と2番目に大きな島です。アイルオブマンはマン島と呼ばれ、英国とアイルランド間のアイリッシュ海(The Irish Sea)のほぼ中央に位置し大きさは伊豆半島ぐらいです。英国本土沖合い近くに点在する3つの島はオフショア金融センターと呼ばれ、その特徴は 英国非居住者(外国人)に対しては 銀行預金利子、金融資産の配当、売買益に対するキャピタルゲイン税、付加価値税、不動産税、贈与・相続税、富裕税等、所得や資産に対する税金が一切かからないことです。オフショアの意味であるInsular Vantage Pointはこれら3島の税制上のメリットを指しています。

オフショア金融センターが基本的に提供する金融サービスは銀行関連、信託関連、投資関連の3つの分野に大別できます。オフショアバンクとは元来ヨーロッパから各国に渡り,特に(旧)英国領で海外駐在員として働くビジネスマンの為の資産運用・保全サービスを提供するオフショア金融センターに設立された銀行と言われています。 オフショア金融センターにおいて銀行及び投資運用会社が提供する投資関連分野でオフショアファンド商品があります。

オフショアファンド(Offshore Fund:海外投資信託)とは元々イギリスで使われ出した用語と言われ、イギリス国外で設立されたファンドとされています。しかしながら、一般的にオフショアファンドと言う場合 もうひとつ条件が加わります。 その条件はファンド自体にかかる税率が低いかもしくはゼロの場所、つまりオフショア金融センターに設立されるファンドを意味します。 オフショア金融センターで登録されている投資信託をオフショアファンド、オンショア(内陸・自国内)に登録されて、販売されている投資信託をオンショアファンド(Onshore Fund)と呼び 区別しています。

最近では、オンショア(自国内)とオフショア(自国外)を広義に区分して使われてきています。例えば、金融機関が富裕個人層を対象にしているプライベート・バンク(Private Bank) サービス業務がありますが、自国内の富裕個人層に海外金融商品の取次ぎは基本的には一切行なわず、国内販売金融商品のみを提供する業務をオンショア・プライベート・バンクと呼び、それに対して自国外の富裕個人層に内外の金融商品を提供する業務をオフショア・プライベート・バンク呼びます。つまり、取引顧客が国内在住者か国外在住者か又は、その金融商品の利用が国内か国外かでその業務分野を分けてきています。◆

次回はオフショアリスク(自国内の潜在的リスク)についてお話します。

オフショア金融センタ−を活用した個人資産運用・防衛法 (1)

オフショア金融センタ−を活用した個人資産運用・防衛法 (3)

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