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スイスの大手銀行UBSが突然スイスに口座を持つ米人個人顧客へのサービスを中止

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スイスの大手銀行UBSが突然スイスに口座を持つ米人個人顧客へのサービスを中止

2008年7月、米国の裁判所が米内国歳入庁(IRS)にスイスに口座を持つ米人個人顧客
の情報を獲得するために召喚することを認めました。

UBSにはスイスに口座を持つ19,000人の米国顧客がいますが、その顧客の情報を日
本の国税庁に当たるIRSが入手するためにUBSを召喚する事が可能になります。

米国、日本を含め全世界で幅広く業務を行っているUBSにとって各国の法律に準拠す
ることは重要なことであることは間違いありませんが、この問題は米国とスイスの一銀行で
の問題ではありません。つまりUBSは自発的に顧客の情報を提供する事は出来ない
事になっています。

なぜならば、スイスには確固たる「スイス銀行法」が存在しており、このスイス銀行
法の基に業務を行っているスイス国内の銀行が独自の判断で、顧客の同意を得ずし
て、第三者に情報を開示することを禁じているからなのです。つまり、米国の裁判所
がUBSに要求する情報開示は正しくはUBSに対してではなくスイス政府に行わなければ
ならないのです。

スイスの銀行において、その顧客情報を第三者への情報開示するには裁判所の判断が
必要になるのであって、本来はUBSと言えどもスイス国内法を犯してその要求に応じ
ることは出来ないことになっているのです。

スイス国内においては「脱税」は犯罪とされていないため、スイスの裁判所がこれら
銀行に情報開示を命じるためには、重要犯罪であること、例えばマネーロンダリング
(資金洗浄)、武器売買、人身売買、麻薬取引などに絡んでいると言う観点からの要
求が必要になります。

しかし、米国内において数千人の人々を雇用し、大々的にプライベートバンキング以
外の業務も行なっているUBSにしてみれば、19,000人の個人顧客情報を犠牲にして
でも米国内で業務を継続することが重要なのでしょう。

実際、突然UBSは米国人へのプライベート・バンキング業務を中止する事を決定し
ました。つまり、スイスのUBSに口座を開き資金を預けていたアメリカ人のプライ
ベート・バンキングの顧客は、突然はしごをはずされてしまったのです。そして、更
に悪い事にスイスにある他のプライベート・バンクは、UBSの現顧客が口座に移そ
うとしても、アメリカ政府との将来的なトラブルを避けるため現UBSの顧客を一切
受け入れていないのが現状なのです。

ちなみにスイス政府は米国政府に対してUBSに既存顧客への情報開示圧力を止める
ように、非公式に依頼をしたと伝えられています。少なくともスイス政府は、あらゆ
る圧力にさらされてはいますが、現スイス銀行法を堅持する姿勢を崩していません。

プライベートバンキングに何を期待するかは、それぞれの資産家、富裕層によっても
異なりますが、プライバシーを重視したい方々には国際メガバンクを利用する事が、
必ずしも最良の選択ではない事が、今回のUBSの件からも良く理解できるのでは
ないでしょうか。■

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